柔軟な働き方が良くないことも
フレキシブルワーク (柔軟な働き方) の一つとして、ITルーツを駆使してどこでも仕事ができるリモートワークがあります。スタッフは、働く場所を選ばず業務ができるようになります。
しかし、それが本当に良いことでしょうか?
同じオフィスに一緒にいることや、顔を見ながら話すことが、良いアイディアを引き出す環境かもしれません。チームワークを成熟させる要因かもしれません。闇雲にモバイルワークを推奨するのも逆効果、という考え方もできます。
モバイルワークの正しい活用方法とは、物理的に離れた場所に「いないといけない」人と他のスタッフが、極力、オフィスにいる環境に近い状況を作ることです。
例えば、産休・育児・介護などで、どうしても在宅勤務が必要な人には、モバイルワークは最適です。外出が多い営業担当者にも適しています。出張が多い役員や経営者にも効果的でしょう。
モバイルワークを推奨する際は、誰に対して、どんな条件で許可するのかを吟味することが重要です。
テレワークの総合サイト「テレワーカーズ」に掲載されました
この度、テレワークに関する豊富な情報を掲載するサイト「テレワーカーズ」に取材を頂きました。テレワーカーの傾向や注意喚起、ユーザーの生の声など、テレワークを検討している企業には、大変参考になるサイトです。
今回、私の取材では、「海外にみる日本のテレワーク事情とは」というテーマでお話しました。是非一度、ご覧ください。
在宅勤務で困ること
今日、あるワークスタイル改革セミナーに参加しました。
ある日本企業で、実際に在宅勤務をしている従業員へ「困ったこと」に関するアンケートを取ったところ、以下の回答があったそうです。
○ ちょっとしたコミュニケーション:オフィスだと、近くの人にちょっと声をかけたり、聞いたりできる。在宅勤務で、この「ちょっとした」コミュニケーションは、仕事を進めるためだけではなく、孤独感を減らすためにも重要です。チャットツールが最も適したツールでしょう。
○ 少しの孤独感:これは慣れもあります。孤独感より、在宅勤務のメリットが大きくなる時がくるはずです。
○ 光熱費が上がる (!):確かに!盲点でした。確かに、自宅にいればそうですね。同企業では、補助金でサポートしているそうです。
○ 腰が痛い、肩が凝る (!!):オフィスの椅子やデスクは、働く人を考えたデザインや設計になっていることが多いのですが、自宅の環境はそうでもありません。同社では、働く場所の写真を撮ってもらい、改善点などをアドバイスするそうです。
テレワーク → オフィス環境を再現できるか
テレワークとは、ICT技術を活用して場所を選ばず働くことを指します。出先から業務をするモバイルワークや、自宅勤務、サテライトオフィスからの業務も含まれます。
テレワークでのコミュニケーションを考える際、私は実際のオフィスでのやり取りをどう再現するかを常に考えます。
声がけ = チャット
ある人の席に行って「○○さん、この件だけど・・・」「昨日の報告書ってできました?」などと声かけする場合。ICTではチャットツールで再現できます。在籍(プレゼンス)機能があれば、相手がPCの前にいるかもわかります。
ちょっとした打合せ = 電話会議
「○○さん、△△さん、5分だけ時間もらえますか?」 - 即席の打合せを行う場合。ICTでは電話や電話会議に当てはまるでしょう。資料は必要ないけど、少人数で簡単に意識合わせしたい場合に最適です。
会議や報告会 = Web会議
予定を決めて、会議室で開催する会議。これはWeb会議が最適です。複数名で資料を見ながら意見交換でき、議事録として会議を録画することもできます。
面談や面接 = ビデオ会議
相手の目を見て、表情や仕草を確認しながら、しっかりと意思疎通をしたい場合。これはビデオ会議に相当します。大きなモニターで綺麗な映像と音声でやり取りすることで、できる限りの臨場感を再現できます。
テレワークを検討する際は、コミュニケーション以外にも社内ルールの変更、資料のデータ化と共有方法、勤務管理などいくつかの変更が必要です。現実的なテレワークの鍵は、実際にオフィスで行っていることをどう再現するか、という視点で考えることが重要です。
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新たな働き方は「足し算」ではなく「かけ算」の効果
日本企業は確実に強くなりました。バブル崩壊の大波を乗り越え、グローバル化に果敢に挑戦し、為替変動にも動じない強靱な体を作り上げました。世界有数の製造大国であると同時に、最高峰のサービスレベルを持つ日本企業は、細部へのこだわりとお客様を重んじる繊細さを併せ持つ日本人のすばらしさの象徴です。多くの海外企業の見本となっています。
しかし少子化と高齢化が、生産年齢人口の減少を引き起こし、日本企業が築き上げた強靱な体力を消耗していきます。体力の消耗を最小限にし、更なる高みへ向かうために何をすべきか。今、日本企業に求められているのは、限られる個々の能力を最大限に引き出し、外から新たな力を取り入れ、新しい技を習得することです。
日本のサービス業の生産性は他の先進国よりも低いと言われています。これは、日本の終身雇用と年功序列が生み出すメンバーシップ型雇用が、人事評価を不明瞭にしており、残業することや、飲み会などの付き合いが評価に繋がるという、日本独特の評価風土を作っています。結果、外国人労働者の受け入れ体制を整備しにくくなることに繋がり、女性が活躍できる機会が少なくなっています。日本での社員教育は、業務遂行のためのOJT (On the job training)がメインで、将来的に幅広く活躍できるキャリアを育むことに繋がっていないと言われています。また、平均寿命が向上する中、経験豊富なシニア層はもっと活躍できる、と言われています。育児や介護、看病が必要な人々は、やりたい仕事から離れなければいけないという現実があります。病気になり、仕事はしたいが回復するまで全力で仕事ができない人々も多くいます。
今一度、グローバルに目を向け、新しい「働き方」に対する学びを求めるときです。欧米では、業務の責任範囲を労使で合意し、成果に対する人事評価を徹底しています。OJTだけでなく、成果を効率的に出すため、外部からトレーナーを呼び社員の潜在能力を高める社員教育に力を入れます。従業員の集中力と業務の質を高めるため、プライベートの充実も大切にします。余計な体力消耗や心配をなくすため、自宅でも外出先でも柔軟に働くことができるようにインフラやルールを整備します。また、避けられず病気になってしまった人々に対して、働く権利を守る制度が確立されています。
これらがクロスに影響し合うことで、足し算ではなく「かけ算」で効果を発揮します。成果に対する公平な評価は、労働時間と成果が比例しないサービス業での生産性を高めます。同時に、有能な外国人を受け入れる土壌が整備されます。男性中心の日本の働き方に新しい風を入れ、女性が活躍できる環境を作ります。育児や介護が必要な人々は、通勤を気にせず、家に居ることができることで心配から解放されて仕事に打ち込めます。外出が難しい治療中の人々は時短をしながらも、それぞれが持つ能力と経験で会社に貢献できます。
日本企業が更なる強みを手に入れるためには、様々な人が、様々なレベルや範囲で、「プロフェッショナル」として活躍できる、新しい風土や制度を取り入れることが最も重要なことなのです。
モバイル活用を考える
先日、「モバイル活用支援フォーラム2016」というセミナーに参加しました。モバイルとは、タブレットやスマートフォンを指します。
モバイル端末は、国内通信事業者の旗振りの元、2010年頃から普及しはじめました。場所や端末の制約をなくし、どこでも業務を可能にする、というメリットの反面、Officeなどのアプリが利用できない、使いづらい、といった問題で、利用が進まないという課題があります。モバイルを配布したが、メールでしか使っていない。もっとひどい場合は、机の中で眠っている、ということもあるそうです。当たり前かもしれませんが、モバイルはパソコンの代わりにはならない、ということです。
最も興味深かったのが、モバイル端末を活用するには、組織自体を変える必要があるこということでした。例えば、モバイルを最大限利用できる営業部門は、モバイルで完結できる業務のみを任せ、伝票処理などのルーティーン業務は、会社にいてパソコンを利用できる他の部門に任せたり、営業支援部を創設して業務を切り離す、と言った内容です。
モバイルを活用するために、組織を変える、というと、一見大胆な話に聞こえます。しかし、モバイルを導入する、と言うことは、働き方を変える、と言うことでもあります。旧体制の組織や業務フローを思い切って改革することは、新しい技術や働き方のメリットを享受するためには必要な事かもしれません。
普及期から活用期に入ったいま、モバイルを導入することが目的ではなく、モバイルを活用して働き方を変え、売上を上げたり意思決定スピードを上げるといった、大きな目標を改めて掲げる時かもしれません。それに合わせて組織や業務フロー、社内ルールを変更する、という横断的な取り組みがモバイル活用の成功に繋がります。
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「テレワーク」を働く人の「生活」という視点で考える
特に「テレワーク」(在宅勤務)は、多くの経営トップが政府に期待する施策です。私は、ここ1〜2年で「テレワーク」が、日本企業が取り組むべき重要な対策の一つになると考えています。同時に、バズワードの一種になってしまわないか?と懸念しています。
昨今ブームとなったCSR(会社の社会的責任)活動や、CO2削減などのエコ対策、プライバシーマーク取得などの個人情報保護対策など。真剣に継続的に取り組むすばらしい会社も多くあります。しかし、「良い会社」でいるために、仕方なく実施している企業も少なくないのではないのでしょうか?実際に、コストも手間も時間もバカになりません。
これらの対策と働き方改革におけるテレワークの大きな違いは、そこで働く方々の毎日の「生活」に深く関わることです。例えば、テレワークで会社との往復2〜3時間を減らすだけで、身体的苦痛は大きく減ります。自宅にいることで心配事が解消されれば、精神的苦痛は大きく減ります。 親御さんの介護が必要な人。育児が必要な女性。配偶者やお子さんの看病が必要な人。自分自身が治療中で外出できない、または外出しなくても良ければ外出したくない人など。このような方々に、テレワークはとても大きなメリットになります。経験していない人にはわかりません。しかし、わからないから対策を打たない、または「良い会社」でいるために取りあえずの対策しか打たない会社では、このような人々には「働きづらい会社」になります。両者にとって非常にもったいないことです。
「テレワーク」は、従業員の「生活」という視点から考え、取り組むことで、多くの会社と従業員にプラスの影響を与えるのではないでしょうか。